第2編 物質の変化

第4章 化学平衡

1可逆反応と化学平衡

2平衡状態の変化

3 電解質水溶液の化学平衡

 

 可逆反応と化学平衡

【可逆反応】

右向き(正反応),左向き(逆反応)のどちらの方向にも進む反応を可逆反応という。どちらか一つの方向には進むが,その逆反応は,ほとんど起こらないような反応を不可逆反応という。

 

【化学平衡】

可逆反応において,正反応の反応速度と逆反応の反応速度が等しくなり,見かけ上反応が停止している状態を平衡状態という。平衡状態はエネルギー的に安定した状態である。

 

【平衡定数】

可逆反応 H2I2 2HIにおいて,正反応(右向きの反応)の反応速度〔 v1k1[H2][I2] 〕と逆反応(左向きの反応)の反応速度〔 v2k2[HI]2 〕が等しくなったときが平衡状態である。v1v2なので,k1[H2][I2]k2[HI]2 が成り立つ。反応速度定数をまとめ,Kとすると次のようになる。このKを平衡定数という。

          〔 K k1/k2 [HI]2/([H2][I2])

【化学平衡の法則】

下の可逆反応において化学平衡が成り立っているとき,平衡定数Kは反応物の濃度と生成物の濃度を用いて下のように表すことができる。Kは温度が一定ならば,常に一定の値をとる。反応物と生成物の濃度の間には,一定の関係が成り立ち,これを質量作用の法則(化学平衡の法則)という。

 
 

例) 3H2 + N2 ⇄ 2NH3        K [NH3]2[H2]3[N2]

 

例題 水素5.5molとヨウ素4.0 mol10Lの容器に入れ,ある温度に保つと次式のように平衡状態に達し,この平衡混合気体中には,水素が2.0mol存在していた。  H2 + I2 ⇄ 2HI 

(1) 平衡混合気体中の各成分気体のモル濃度を求めよ。  (2) この温度における平衡定数Kを求めよ。

(3) この温度で,水素3.0 molとヨウ素3.0 mol5.0Lの容器に入れた。平衡後のヨウ化水素は何molか。

 

平衡後の各物質の物質量は,反応量から求めると次のようになる。

 

(1) 10Lの容器に入っているので,[H2]0.20mol/L [I2]0.050mol/L [HI]0.70mol/L  

(2) K7.02/(2.0×0.50)49

(3) HIxmolとすると,平衡後の各物質の物質量は反応量から求めると,次のようになる。

 

平衡後の各物質の物質量をモル濃度にして,平衡定数の式に代入する。分母と分子で体積(5.0L)は約分されるので,代入は物質量を代入すればよい。49x2/(3.0x/2)2x4.664.7mol

 

例題

 ある温度で,nmol〕の四酸化二窒素N2O4を体積VL〕の容器に入れると,二酸化窒素NO2を生じて次式のような平衡状態に達した。このときの全圧をpPa〕,四酸化二窒素の解離度をαとして,下の問に文字式で答えよ。

 N2O4() ⇄ 2NO2()

(1) 平衡状態における二酸化窒素の物質量は何molか。

(2) 平衡時の四酸化二窒素の分圧は何Paか。

(3) この反応における平衡定数Kはいくらか,単位もつけて示せ。

 

各物質の物質量は,反応量から次のようになる。

   

(1) 2mol〕  

(2) p(1α)(1α) 

(3) 42V(1α)

例題 酢酸の1.00molとエタノール1.00molの混合物を反応させ,ある一定温度で平衡状態に達したとき,酢酸が0.25molに減少していた。

  CH3COOH + C2H5OH  ⇄  CH3COOC2H5 + H2O

(1) この温度における反応の平衡定数はいくらか。

(2) 酢酸1.00mol,エタノール1.00mol,水4.00molの混合物を反応させ,同じ温度で平衡状態に達したとき,酢酸エチルは何mol生成するか。

 

(1) 9.0  (2) 0.50mol

 

圧平衡定数

 気体が反応する可逆反応では,平衡時のモル濃度を用いた平衡定数以外に,成分気体の分圧を用いた圧平衡定数がある。温度が一定ならば,圧平衡定数の値は一定の値をとる。

 

例題  aA + bB  ⇄ cC + dD の反応の反応を用いて,圧平衡定数Kpと濃度平衡定数Kcの関係を式で記せ。

 

例題

 二酸化窒素NO2が常温・常圧で次式のような平衡状態ある。

2NO2 ⇄  N2O4

(1) 20°Cで,NO2の分圧が0.40×105PaN2O4の分圧が0.050×105Paのとき圧平衡定数を求めよ。

(2) 20°Cで全圧を9.0×105Paとしたとき,NO2N2O4の物質量比を求めよ。

 

(1) 3.1×106  (2) NO2N2O445 

 

例題

 ある物質量の四酸化二窒素N2O4を密閉容器に入れて70℃に保ったところ,可逆反応

N2O4 ⇄ 2NO2がおこり,平衡状態に達した。このときN2O4の解離度はいくらか。ただし,平衡状態における圧力を1.5×105Pa70℃における圧平衡定数を2.0×105Paとする。

 

0.50